ある性同一性障害者の自己構築プロセスの分析:同一トランスクリプトによる知見の羅生門的生成
本研究では、性同一性障害者が他者と居合わせる場面における対話のポジショニング分析を行った結果、性同一性障害者が距離を取ろうとする距離化行為-①他の当事者との間で、②自己と身体との間で、③過去の自分との間で、④今、自分が当事者として生きているという現実に対して-が自己構築に影響を与えていることが明らかになった。距離化行為には、静観的認識によって想像上の世界を視野に入れ、世界を広げる働きがみられた。
京都大学教育学研究科紀要