66個のサブユニットからなる26Sプロテアソームは真核生物に広く保存されたタンパク質分解酵素複合体 であり、ユビキチン化タンパク質の分解により細胞内恒常性の維持に寄与する。近年、加齢に伴うプロテ アソーム機能の低下が神経変性疾患や老化の原因になることが注目されている。ショウジョウバエではプ ロテアソームサブユニット過剰発現系統においてプロテアソーム活性亢進による個体寿命の延⻑が報告さ れている。しかし、哺乳類個体におけるプロテアソーム発現‧活性亢進の方法は確立されていないことか ら、病態発症や老化への影響についての検証ができない状況であった。 我々はこれまでの研究においてプロテアソーム機能低下時におけるプロテアソーム遺伝子群の代償的な 発現誘導に働く転写因子Nrf1の活性化に必要な因子としてDDI2を同定した。本研究では、マウス個体での Nrf1恒常的活性化によるプロテアソーム機能亢進の可能性を検証するため、DDI2を全身性に過剰発現させ
る目的でRosa26遺伝子座にDDI2 cDNAノックインしたマウス(DDI2 KIマウス)を作出した。
DDI2 KIマウスは正常に発育し、臓器抽出液におけるプロテアソーム活性の亢進が認められた。また、 DDI2 KIマウス由来MEFにおいてプロテアソーム阻害剤処理条件下におけるNrf1活性化を示すプロセシング の亢進やユビキチン化タンパク質蓄積の減少が確認された。これらの結果より、DDI2はプロテアソーム機 能亢進に恒常的に働くとともに、プロテアソーム機能低下への応答も亢進させることが示された。さらに 加齢個体においてもDDI2 KIマウスはプロテアソーム活性亢進を示し、野生型マウスと比較して個体寿命の 軽微な延⻑傾向も確認された。DDI2 KIマウスが抗老化の兆候を示したことから、現在加齢マウスの臓器を 用いた定量質量分析ならびにユビキチン化プロテオーム解析を組み合わせ、老化臓器におけるプロテア ソーム分解の主要なターゲットとなるタンパク質を探索している。
担当部分:共同研究のため本人担当部分抽出不可能
加藤 雅和、濱崎 純、村田 茂穂