TNF-αは腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する作用を持つことが知られている。しかし、TNF-αの全身投与によるがん治療は、副作用の問題から成 功しておらず、TNF-αを医薬品として利用するためには腫瘍組織特異的に作用さ せる必要がある。我々はこの課題を、腫瘍組織に特異的に集積する性質を持った、 偏性嫌気性菌であるビフィズス菌を DDS 担体として用いることで克服し、ヒトTNF-α発現プラスミドを導入した組換えビフィズス菌クローン(以下 M4)が、1 大腸菌由来の標品 TNF-αと比較して同程度の活性を持つ TNF-αを分泌すること、 22 種類の膵臓癌細胞に対して in vitro、in vivo 実験系のどちらでも抗腫瘍効果を 発揮することを既に報告している。今回は悪性黒色腫細胞 B16F10 に TNF-αが有 効であるかを in vitro で検討し、局所に作用させた TNF-αが、宿主の免疫能を高め るかどうかを in vivo で検討した。
結果としてTNF-αは B16F10 細胞に対して濃度依存的に増殖阻害活性を示した。また M4 投与により、腫瘍組織内に無処置群と比較して有意に CD8+細胞が誘導された。本実験の結果から、正常な免疫能を維持したマウスに対して TNF-αを作 用させた場合、TNF-αによるアポトーシスの誘導のみならず、宿主の免疫の活性 化による抗腫瘍作用が見られることが示唆された。
担当部分:共同研究のため本人担当部分抽出不可能
加藤雅和、平裕一郎、平郁子、清水芳実、磯田勝広、斎藤浩美、石田功