体外循環を使用した心臓血管外科手術において、中枢温のモニタリングは食道温および、直腸温での測定が一般的である。体外循環においては、急激な体温低下時や上昇時の反応に対し鼓膜温での測定が優れており、推奨されている。これまでの鼓膜温の測定ではプローブを鼓膜へ直接接触させる必要があり、侵襲性が高かった。非接触タイプも存在したが、連続測定が行えず、中枢温の変化に気づきにくくモニタリングには不向きであった。これら問題点を考慮し鼓膜への接触が無く、連続測定が可能なCEサーモ(NIPRO社製)が使用できるようになたため、小児体外循環における中枢温のモニタリングとして使用が可能であるか検討を行った。
モニタリングでは、手術中の鼓膜温と食道温を連続測定し、1分間隔で記録を行った。鼓膜温の測定にはCEサーモⓇを、食道温の測定にはモナサームⓇ (covidien社製)を使用した。検討項目として①体温変化に対する測定温度の追従性、②両者の相関関係、③使用における簡便さ、以上について比較を行った。
モニタリングの結果、体外循環による体温変化に伴い鼓膜温と食道温は同様の変化を示した。心筋保護液の投与時には、食道温のみが冷却された心筋保護液の影響を受けてしまう場面が確認できた。しかし、鼓膜温では同様の影響を受けることなく安定したモニタリングが可能であった。体格が小さい患者へ使用する場合、外耳道径に対してCEサーモⓇのプローブ先端径が大きく、装着が困難であった。プローブと接触する外耳道周辺の皮膚を手術終了後に確認をしたが、損傷等は認めなかった。
鼓膜温は内頸動脈から直接灌流されるため、脳温を反映させた中枢温としての信頼性が高いと考えられる。体外循環時の鼓膜温の測定として、成人症例においてはCEサーモⓇの有用性が報告されている。しかし、小児症例においては報告が無いため、使用が可能であるかを検討した。