学会発表
本研究では、前回、前々会の研究に引き続き、女性GID(FTM)と男性GID(MTF)の性役割志向(男性性・女性性)、人格特性を比較検討し、FTM、MTFそれぞれにおいて、性役割志向が人格特性及び自尊感情とどのように関連しているかについても明らかにするため、FTM 24名、MTF 30名を対象とした心理検査の結果を解析した。対照として、1998年、2000年に筆者らが、首都圏の2つの民間企業と1つの公的機関で働く男性784名、女性394名を対象に行った自記式質問紙調査のデータを用いた。その結果、GID患者は知的好奇心・審美的感覚・内的感受性が強いこと、社会において高いストレスを受けていること、特に、MTFは心理的ディストレスに対して敏感で、自尊感情が低下していること、その中でも、女性性が高いMTF はより鋭くポジティブ及びネガティブな情動を経験する傾向にあること、FTM・MTFに関らず男性性の高さが自尊感情に大きく影響していることが示唆された。