学会発表
小野和哉, 石黒大輔, 中村晃士, 沖野慎治, 森美加,他1名.
自傷行為についてその今日的意味を考察し、その対応について述べた。従来の自傷行為は、①防衛機制の破綻であり、②周囲の関心を集める行為として見なされたり、③反社会的、もしくは非道徳的行為と批難され、④治療対象としての症状としてではなく禁止の対象となる行為、であったと思われる。こうした視点からはこの行為自体を積極的に治療で扱おうとする視点は生まれにくい。しかし、実際の救急や精神科臨床の場では治療的対応が求められる症候となっている。そこで、最近の自傷行為への治療的アプローチを検討してみると、次のような点が今日的視座ではないかと考えられる。まず①非適応的防衛機制の一つとして認識する。次に行為自体を脱価値化して②行為自体の一般的価値評価を行わずありのままに認識する。そして③治療阻害的行為として排除するのでなく治療対象としての症状として考える。といった3点である。このように自傷行為は近年になりその意味を大きく変えており、その治療的視座も大きな変化を遂げてきているといえる。