報告書
小野和哉, 沖野慎治, 中村晃士, 石黒大輔, 森美加, 黄菊坤, 中山和彦.
過去3年間の研究成果である「境界性パーソナリティー障害の入院治療ガイドライン」を、実際の治療現場で運用し、その効果、認容性、改善点などを明らかにする目的で研究を施行している。今回はガイドラインを実際に運用してその運用上の問題点、改善点を抽出する調査の継続状況、現在までの入院治療の予後研究の結果、ガイドライン運用治療者へのアンケート結果を合わせて報告した。1) ガイドラインの適用状況については、評価尺度により半数の項目が適用された。定時面接、短期入院、人格の問題の回避、主体性の維持などガイドラインの骨子となる部分では殆どの症例で適用されていた。2)予後調査の結果、ガイドラインの運用は平均4回ほどの入院により治療を継続させ初回入院後5年以内に有意な改善をもたらす可能性が示唆された。3)ガイドライン運用治療者へのアンケートにおいては、ガイドラインの骨子である、入院治療機能の限局化(短期、構造化、主体性維持)の意義は患者の病態に影響を与え、治療しやすい状況を作り出しているという共通の認識を得た。