学会発表
Nakamura, K., Okino, S., Nakamura, A., Mori, M., Ishiguro, D., 他3名.
摂食障害と統合失調症はともに思春期前後より発病する精神疾患である。そして統合失調症の前駆症状として摂食障害があることや、摂食障害の患者の一部が統合失調症へと移行していくことは知られている。摂食障害患者の中で統合失調症へ移行するであろう患者を予測することは臨床的に治療戦略上大変意味のあることであると考えられる。そこで、摂食障害がその後統合失調症に移行する患者と、そうでない患者の本来の性格傾向、食行動異常にはどのような特徴の違いがあるかを明らかにしたいと考えた。日本人女性摂食障害患者に日本語版Eating Disorder Inventory-2(EDI-2)および日本語版Multidimensional Perfectionism Scale(MPS)を施行し、その後患者を経過観察し、統合失調症へと移行した群(ED-SCH群,n=7)と、その後も摂食障害であり続けた群(ED-ED群,n=22)を比較検討した。その結果、EDI-2の下位項目のうち,IA(内部洞察interoceptive awareness)において、ED-SCH群がED-ED群より有意に(p<0.05)得点が高かった。つまり、摂食障害患者の中でも、内部洞察の得点が高いもの、すなわち自分の感情に対して反応することに混乱している患者ほど、統合失調症へ移行する可能性が高いと考えられる。言い換えれば、統合失調症へ移行する摂食障害患者は摂食障害の病期中に自分の混乱する感情に、より翻弄されている可能性が示唆される。また摂食障害患者が統合失調症へと移行するかどうかを予測する上で、EDI-2の下位項目であるIAは役立つことが分かった。