学会発表
中村晃士, 沖野慎治, 石黒大輔, 小野和哉, 森美加,他2名.
以前から統合失調症の前駆症状として摂食障害があることや摂食障害を合併する統合失調症があることが報告されており、最近では摂食障害が統合失調症のphenotypeであるという考え方もある。そこで、摂食障害から統合失調症へ移行した症例を報告し、摂食障害が統合失調症の発病過程においてどのような意味を持っているかについて若干の考察を加えた。この症例の特徴は、過食症状が半年ほど続いた後に精神科を受診しているが、その精神科受診を機に一気に自我の解体が進み、統合失調症を発病していったことである。つまりはそれまで過食によって防衛されていた自我がその過食が一時的になくなってしまったために一気に不安にさらされることになり、自我の崩壊過程へと転じていったと思われ、過食行動が不安の防衛としての役割を担っていたと考えられる。また統合失調症の発病前には過食行動は患者にとって自我異和的な症状であったのが発病過程においては自我親和的なものとなり、さらには消失していったことも注目すべき点であろうと思われる。