【目的】自閉スペクトラム症(以下、ASD)に対し、幼児期と就学後の2時期におけるナラティブの内容や語り方について発達的経過を分析した。【方法】幼児期に言語指導が行われたASD児5名に対し、幼児期(6歳0か月~6歳9か月)と就学後(10歳8か月~12歳3か月)において、系列絵図版計12話を示してどのようなお話か叙述を求めた。発話を逐字に起こし、コミュニケーションユニット(以下、CU)に区切り、ストーリーに関連する内容かどうか(基準CU、コメントCU、逸脱CU)を比較した。また、表現として分かりにくい部分を抽出し、伝わりにくい理由(キーワード等の省略、出来事間の関連なし、関連しない話題の付加、表現の誤り、場面設定の言及がない)を分類した。【結果】基準ストーリーに沿った語りである基準CUは、幼児期平均23.6に対し、就学後平均43.8であり有意差をみとめた。また、伝わりにくい理由については、場面設定への言及のないものが多かった。いずれの理由も就学後には低下した。各対象児では、全体的に改善をみとめる場合と課題が残る場合があり、個別性をみとめた。【結論】ASD児のナラティブでは、幼児期から学童期にかけてストーリーの骨組みに当たる部分の産出ができるようになった。また、質的側面についても、わかりやすい語り方ができるようになるが、発達の仕方にはいくつかのタイプをみとめることが示された。