名取威徳, 秋元功司, 元木一宏, 肥塚靖彦, 比嘉辰男
DidemninB1)をはじめとして, 海洋生物が生産する有機化合物を抗腫瘍剤の資源とする試みが1970年代後半より続けられ, 主に細胞毒性の強い物質が単離・開発されてきている. KRN7000は抗腫瘍活性を指標に海綿より単離された新規スフィンゴ糖脂質agelasphinを母化合物とし, 構造活性相関の知見より開発候補品として選ばれた低毒性の新規抗腫瘍性化合物である. 本稿ではこの化合物の開発過程と, 免疫賦活作用に基づく顕著な抗腫瘍活性, さらにその作用機序の一部を紹介する. 抗腫瘍物質のスクリーニングと活性物質の単離・構造解析・全合成 筆者らは新規抗腫瘍物質探索のスクリーニングソースとして, 合成品, 微生物培養液, 植物エキス等に加え, 物質生産の多様性に着目し, 海洋生物, 特にSCUBAで採取される海綿やサンゴの抽出エキスを用いてきた. 採取された海綿類は, 直ちに粉砕, 凍結乾燥され, 粉末の状態で保管される.