【緒言】COVID-19感染症による行動制限が行われたことで切迫流早産患者が有意に減少したとの報告が散見されるようになり,改めて切迫流早産妊婦に対する安静が重要視されるようになっている.当院における切迫流早産患者に対する理学療法の効果を検討した.
【対象と方法】2019年4月から2021年3月に理学療法が処方された切迫流早産の患者33名を対象とした.評価項目として転帰,入院時の年齢,妊娠週数,入院期間,安静度,ADLの指標であるFunctional Independence Measure(以下,FIM)を診療録を用いて後方視的に調査・検討した.理学療法は患者の体調に応じて1回20分を平日の毎日もしくは隔日で行った.理学療法の内容は腹圧を避けるように配慮し,下肢を中心とした自動・他動ストレッチング,座位・立位での低負荷での四肢筋力強化運動,自主練習及び動作指導を行った.
【結果】理学療法開始後明らかな切迫流早産の症状増悪はなかった.21人は入院中に分娩,11人はADLが自立し切迫流早産が安定したため自宅退院となり妊娠を継続,1人は周産期管理のため他院に転院した.入院中に分娩に至った21人は分娩後ADLが自立となり,母体の予後は良好であった.産科入院時の年齢は35歳(32~38歳)(中央値と四分位範囲,以下同様),入院時の週数は27週4日(29週0日~22週3日),入院期間は60日(47~73日)であった.入院時の安静度は床上のみ11名,病棟トイレ歩行のみ可21名,制限なしは1名であった.また、理学療法終了時のFIMは介入前と比較し、有意に高値を示した.
【結論】患者の体調への配慮と,腹圧を避けた理学療法介入にて切迫流早産の増悪なく,廃用症候群の改善が可能であった.