目的:災害被災地で活動経験のある鍼灸師へのインタビュー結果から、災害被災地における安全な鍼灸施術に必要な方策を検討する。
方法:半構造化インタビューにより、災害被災地での鍼灸施術活動の経験がある2名の鍼灸師から施術上の安全面について感じたことを聴取し、逐語録を作成した。また、逐語録はテキストマイニングソフトを用いて頻出語をもとに共起ネットワークを作成し、インタビュー内容と併せて考察を行った。
結果:対象者1の活動場面では、手洗い、擦式消毒、グローブは使用できた。活動を通して、感染から自身および受療者の身を守る必要性、また、鍼灸師の信頼を失わないためにも施術上の安全対策を怠らないこと、安全対策マニュアル等の必要性を感じていた。さらに、援助の気持ちだけではなく、十分な準備の元に災害被災地で活動する必要も感じていた。対象者2の活動場面では消毒薬は十分にあったが、手洗いは十分には行えずグローブ使用の必要性を感じていた。また、落鍼への注意喚起はされていたが、それ以外の安全性については個人で気をつける状況であった。患者の情報は他の医療スタッフと共有されていて、不安を感じることはなかった。
考察:鍼灸師が災害被災地で施術を行う際は、衛生面において、手洗いが十分に行いにくい状況あるが、消毒薬やグローブを活用した衛生的な施術は可能であると考えられる。安全な鍼灸施術のためには、災害被災地での施術は援助をしたいという気持ちだけでなく、必要な準備をした上で、他のスタッフとコミュニケーションをとる必要があることが示唆された。安全確保が個人にゆだねられることが無いよう、災害被災地の特徴を考慮した安全対策マニュアル作成の必要性も考えられる。
結語:災害被災地での安全な鍼灸施術のためには、安全を確保できる機材の準備、スタッフ同士のコミュニケーションが必要である。また、安全対策マニュアルの作成も望まれる。
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恒松 美香子、池宗 佐知子、今井 賢治