はじめに:原因不明の頭の痺れを訴えた患者に対する鍼施術の効果を耳朶血流および心拍変動の変化を評価項目として症状の変化を考察した。
症例: 65歳の女性。4年前から頭部のしびれを訴えていた。1年前からしびれが増強し、睡眠に支障をきたすようになった。画像検査や臨床検査で異常は認められなかった。内服薬で治療したが、症状は持続した。患者の希望により鍼施術を行った。Cornell Medical Index-Healthスコアは2であった。身体所見では、頸肩腕筋に著明な緊張が認められた。
鍼施術: BL10とGB21には鍼通電を、BL13とBL43には頸肩腕筋の緊張の緩和、頭皮循環の改善、心身過緊張の軽減を目的とした置鍼を10分間行った。
測定:心拍変動(HRV)、耳朶血流、頭部しびれレベルを用いて患者を評価した。
結果: 鍼施術後、彼女のHRV HFは増加した。一方、LF/HF比、耳朶血流、頭のしびれは減少した。その他の結果については、大きな変動は観察されなかった。
考察:心拍変動を評価したところ、LF/HFの減少は交感神経活動と関連し、HFの増加は副交感神経活動と関連していた。耳朶の血管はコリン作動性交感神経興奮の結果拡張するため、本症例では交感神経活動が抑制され、血流が減少した。頭部への血流が減少し、心臓の副交感神経活動が亢進したことが、患者のしびれの消失に関係したと考えられる。
恒松美香子、篠原 大侑、今井賢治