トランスジェンダーを生きる当事者と家族:人生イベントの羅生門的語り
本研究はトランスジェンダー者の性別移行に伴う家族の経験に迫った事例研究である。家族成員の語りを重ね合わせる羅生門的手法から、母子が経験した不登校イベントおよび性同一性障害イベントが明らかになった。性同一性障害者と母親の間には、関係を悪化させる悪循環構造が存在し、家族システムに深い影響を与えていた。考察では、家族にとっての病いは、上記の2大イベントをめぐってなされる相互行為から構成されると論じた。
質的心理学研究