本書は、ロンドン商人ボディントン家に焦点を当て、三〇〇年以上の非常に長い期間を扱った研究である。タイトルから想像される商業史、社会経済史の枠にとどまらず、政治史、宗教史の領域にも踏み込んだ間口の広い研究でもある。本書はレヴァント貿易や西インド貿易を扱った商業史研究でもあるが、営業史料を残していないボディントン家を素材としている点に大きな特色があり、貿易史研究として極めて画期的である。著者は二次文献を援用しつつ、書簡などの家族文書、政府文書、新聞雑誌、取引先商人の文書などから同家の事業内容を再構成している。