Shared decision making(SDM)とは、「患者背景や患者自身の考えを尊重し、医師を含めた医療者と繰り返し話し合いながら、最良の治療方針を決定すること」である。SDMは腎代替療法のように、治療法に選択肢があり、どの治療法も根治療法ではない場合によい適応となる。現在、腎代替療法においては、さまざまな職種が役割を分担するチーム医療がおこなわれており、医師をはじめ、看護師、薬剤師、管理栄養士、そして、臨床工学技士などが関与する。このワークショップでは、臨床工学教育におけるSDMの問題を明らかにし、その対策について検討したい。
腎代替療法において、臨床工学技士の主な業務は血液透析装置の操作と保守点検、血液透析液の清浄化である。患者がどの腎代替療法を選択するかの意思決定に至るまでに、医師の指示のもと、臨床工学技士が血液透析装置などについて患者に話す機会はある。そのとき、臨床工学技士がSDMの概念を適切に理解していないと、患者が最良の治療法を選択できなくなる可能性がある。さらに、患者への十分な情報提供が行われたSDMでは、医療者との強い信頼関係を築くことができるという報告があるが、臨床工学技士のSDMの理解の程度によっては、信頼関係が満足に築けず、治療自体に影響を与えることも考えられる。医師や看護師よりも臨床工学技士は、腎代替療法導入前の患者と話す機会は、比較的少ないため、SDMについて十分に理解していなくても、現状では直ぐに困ることは多くないが、チームとして最良の医療を提供するには、臨床工学技士もSDMについて十分に理解しておく必要がある。現在は、臨床工学技士の養成プログラムにおいて、SDMを直接取り扱う科目が設定されておらず、国家試験への出題もない。そのため、SDMについて学習する機会がほとんどない。今後はカリキュラムへの導入も検討の必要がある。
卒後早くから良いSDMを実践するために、臨床工学技士の養成プログラムにおいて、ロールプレイを取り入れることが有用と考えられる。臨床工学技士および患者役を行うことで、患者の心理や気持ちの変化に気付くことが予想される。
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