我が国の超高齢社会を背景に、急性期病院の入院患者のうち、65歳以上が占める割合は約70%を占めている。急性期病院に入院した高齢患者の日常生活行動やQOLを維持しながら、健康回復を促進することは看護の重要な課題である。この研究は、急性期病院に勤務する看護職員に対し、エイジング・センシティブ・ケア(高齢者中心のケア)向上を目指した教育プログラムを実施し、その有効性を検討することを目的とする。
第1段階:急性期病院に勤務する看護職員に対する「エイジング・センシティブ・ケア向上を目指した教育プログラム」を作成するため、①老人看護専門看護師5名に半構成的インタビュー(平成26~27年に実施)から得られたデータより、高齢患者の看護アセスメントの視点を抽出、分析し、プログラムの教育目標、教育内容として設定した。②現任の看護師教育に従事する看護師5名を対象のグループインタビュー(平成27年に実施)から得られたデータから、効果的な教育方法を抽出、分析した。また、平成29年2月に米国におけるシミュレーションの教育方法に関し視察し調査を行った。
第2段階:第1段階で抽出された要素を基に、「高齢患者に対する看護アセスメント力向上プログラム」を作成し、1施設に実施した。教育プログラムの内容は①専門看護師による「高齢者看護アセスメントの視点」に関する講義、②高齢者に多くみられる看護アセスメントに関する自作カードによる個人学習、③事例検討の3つのプロセスから構成される。その教育プログラムの有効性を測定するため、介入前、直後、終了3カ月後に看護師のアウトカム指標として「看護職員の高齢患者に関する基本知識、アセスメント力、専門職の自律意識」を調査する。患者のアウトカム指標として、介入前後90日間の「高齢患者の褥瘡発生率、転倒転落発生率、せん妄発生率」を測定し比較する。