【目的】慢性足関節不安定症(以下,CAI)は足関節周囲筋のみならず,膝・股関節周囲筋活動の低下が指摘されている.しかし,先行研究では足関節回内筋力を発揮するために起こる体幹部の姿勢制御パターンを視覚的に再現した研究は報告されていない.本研究は,外傷歴のない下肢(以下,健常群),足関節内反捻挫既往後に主観的不安定性のない下肢(以下,既往群),足関節内反捻挫既往後に主観的不安定性のある下肢(以下、CAI群)の3群において,それぞれの足関節回内筋力を発揮した際に起こる体幹部姿勢制御パターンを実験下で可視化すること,および群間における差を検討することを目的とした.
【方法】健康な成人22名の44肢をアンケート調査にて健常群,既往群,CAI群の3群に分類した.次に,背臥位にてレッドコードにより重力の影響を除き,足関節回内筋力を発揮した際に起こる前額面上の体幹部動作パターンを動画にて撮影した.その際の動作パターンを,体幹部が持続安定する型(以下,理想型),一時的に安定するが動揺し不安定となる型(以下,動揺型),体幹部が安定しない,または動かない型(以下,異常型)の3型に分類し,3群間における差を検討するためにクラスカル・ウォリス検定および多重比較を行った.
【結果】健常群では理想型10肢,動揺型0肢,異常型1肢,既往群では理想型7肢,動揺型5肢,異常型10肢,CAI群では理想型2肢,動揺型6肢,異常型3肢であった.健常群では理想型が有意に多く,CAI群では理想型が有意に少なかった.既往群は群間による差は認められなかった.
【考察】CAI群は元より,既往群にも足関節回内筋力を十分に発揮しにくいと考えられる姿勢制御パターンが見受けられ,足関節捻挫再発のリスクが潜んでいる可能性が示唆された.足関節運動に影響するフィードフォワード機構を評価することが捻挫再発予防マネジメントに重要であると考えた.
Key word:慢性足関節不安定症,姿勢制御,フィードフォワード機構,足関節捻挫,捻挫再発予防