両側小脳出血の運動失調患者に対し、感覚増強をした訓練の即時的な影響を報告する。尚、発表に際し症例より同意を得ている。対象は右利きの40代男性。入院から一週間後にはFIM項目全てが7点でADLは自立となり、書字や上肢リーチ時の企図振戦や運動分解のみが認められた。そこで手指の接触情報を振動としてこめかみに伝える触覚フィードバック装置を装着し、20分間のペグ訓練を施行した。訓練前後で上田の協調性テスト、SARAの鼻指試験・指追い試験、ペグ評価、所有感、主体感、使用感を評価した。訓練前後で、協調性テストの検査Ⅰにおいて、右上肢で50点叩打座標の中心距離が有意に短縮した。検査Ⅱの右上肢では(秒数、誤数)が(26.5、4)から(25.8、1)に改善した。SARA(右、左)の鼻指試験の点数は(1、2)から(0、1)に、指追い試験では(1、1)から(0、1)に改善した。使用感は「違和感や不快感がある」とのことであった。協調性テストの検査Ⅲやペグ評価、所有感、主体感では著明な変化は認められなかった。一部の小脳性運動失調の改善に感覚増強が寄与する可能性が示唆された。また、ADLは物品操作を多く行うためADL訓練への導入や長期的な訓練の検討が必要と考えられた。
本人担当部分:抄録、発表準備協力 (共同) 共同発表者:望月光、吉野智佳子、下村義弘、上島伽乃