感覚障害への治療介入として、手が受け取る摩擦情報を振動刺激に変換して補完する、動触知覚弁別フィードバックシステム、ゆびレコーダーリハビリタイプ(ゆびレコ)が開発された。今回、重度感覚障害が後遺した慢性期の症例に対し、ゆびレコを使用した上肢機能訓練を実施したので報告する。尚、本発表に際し症例に同意を得た。対象はくも膜下出血発症から 5 年以上経過した 40 代右利きの女性。軽度右片麻痺と重度感覚障害が後遺していた。シングルケースデザインの BAB 法を用いた。A 期は標準的な上肢機能訓練を 20 分実施し、B 期はゆびレコを装着して上肢機能訓練を実施した。A 期、B 期の介入前後で体性感覚、患側上肢を自分の体と感じる程度(所有感・NRS で評価)、SARA 指追い・鼻指試験を評価した。介入中は、患側上肢を自分で動かしていると感じる程度(主体感・NRS で評価)と内省、MAL-QOM(QOM)を評価した。A 期、B 期ともに介入前後の体性感覚、所有感、SARA 指追い・鼻指試験に大きな変化はなかった。 主体感、QOM は A 期より B 期で良好で、上肢操作性や主体感の改善について内省が得られた。【考察】ゆびレコの使用は、主体感が増加するため、感覚障害による上肢機能障害の訓練の一助となると考えられた。
本人担当部分:抄録、発表準備協力 (共同)
共同発表者:篠原真矢、吉野智佳子