多発性硬化症(以下 MS)患者の多くは若年でありしばしば復職の問題に直面する。今回、身体症状の他、精神症状および高次脳機能障害を生じた MS患者に対し復職支援を行った一例について報告する。なお、 対象者より書面にて説明と同意を得た。対象は高次脳機能障害・失調歩行が後遺した 29 歳男性で復職に向け外来 OT が開始となった。職業準備性ピラミッドに則り、生活リズムの是正、活動量の増加、保健行動をとり、かつ上司や産業医に自身のことを伝えることができるよう疾病指導を行った。また外来最終日には千葉ハローワークの難病就職支援サポーター、母に同席していただき、症状増悪時の対応指導、相談窓口の明確化、前医 SWとの情報共有を行い定着支援に繋げた。傷病手当の終了に合わせての復職を希望され 1ヶ月後外来終了となった。日中の覚醒・活動時間を仕事と同様に過ごし、活動量は 1 日 2000歩から 5000歩へ増加 、職場近くでの一人暮らしを再開された。産業医との面談を経て完全在宅での一般勤務が可能となった。高次脳機能障害・鬱症状により、現実検討能力が低下していたが、具体的な目標を立て、活動量の増加を歩数で確認することで、成果が可視化され、自己効力感が高まり、意欲を保った状態で復職に繋がったのではないかと考える。
本人担当部分:抄録、発表準備協力 (共同)
共同発表者:原田里菜、吉野智佳子