本研究は先行研究と同様に、陽性症状への効果が確認された。一方で、Moritz et al.(2014)の報告で示された3年後の自尊心の改善がMCT直後の結果として確認された。同時に、陰性症状の改善もMCT直後で確認されている。感想の分析より、対象者に「認知バイアス理解-自己洞察-対処」の意識があることが考えられる。そして、ホームワークを実践する場としてDHを用いており(e.g.「これはMCTでいう○○」と話をしているetc)、スタッフからのMCT内容を実践した際のポジティブフィードバックを受けられることが、即時的な自尊心の回復に影響していると考える。自尊心の回復から、自発的に社会に働きかけることが陰性症状の改善につながり、従来MCTの報告で示された陽性症状への結果も同時に見られた可能性が考えられる。つまり、MCTでの内容を理解し、DHを実践の場として用いることが、MCTにおける即時な効果を示した一因で、相互的作用があると考える。しかし、本研究は臨床群のみの介入研究であるため、今後は対照群を設定し、その効果について検討する必要があると考える。 江口聡,藤枝由美子,夏堀龍暢,山崎修道,管心,笠井清登