働く場を移動した経験(以下、移動経験)のある看護職自身の移動に対する認識および自己の看護実践能力が融合されるメカニズム(移動前からもっていた能力の変化や新しく身についた能力などがどのように変化し融合するか)について明らかした。調査協力依頼に同意の得られた9名に対して半構造化面接を行い、インタビューを逐語録にした内容をM-GTAの手法を用いて質的に分析した。
対象者は新しい職場に入職をすると、今までの環境と新しい環境との差に戸惑いながらも、「とりあえず言われた通りにし」ながら、「信用を得るよう努力するなど4つの戦路を使いつつ、新しい職場への適応や能力の融合・拡大をしていた。
対象者はこれまでの職場との違いに直面し戸惑うが、新たに置かれた状況の中で求められるものが何であるかを見極め、これに応じようとしていた。この過程で、新しい職場で求められる能力とこれまで培った能力を照らし合わせ、一方でこれまで培ってきたを知識・技術を活用しつつ、他方で必要な知識・技術を新たに獲得して自らの能力をすり合わせて(融合させて)いた。能力の融合は、増加する経験を整理しつつ、能力を質的に変化させて新たな能力として統合することや、対象者自身が意図的に人間関係の濃淡を作り、その関係を活用して必要とされる他者からの支援を得ることで起きていた。