【背景】運動時における中枢性循環調節機構の一つに,セントラルコマンド信号が考えられている.視床下部結節乳頭核(TMN)は運動時の循環動態制御および血流再分配に関与している可能性が高く,セントラルコマンド信号を調節する領域の一つであることが示唆されているが,筋や内臓血流量に及ぼす影響については明らかでない.【目的】本研究は,TMNへの一過性刺激が平均血圧,心拍数,骨格筋血流量,腎血流量に及ぼす影響について調べた.【方法】ウレタン麻酔下Wistarラット(n = 10)のTMNに電気刺激(200 μA,50 Hz,30秒)を実施し,各パラメーターを測定した.また,血圧と血流量から筋および腎臓血管抵抗を算出した.【結果】TMN刺激による各パラメーターの変化量について,平均血圧(4.81 ± 2.04 mmHg),腎臓血管抵抗(0.27 ± 0.19 mmHg/mL/min),骨格筋血流量(1.65 ± 2.86 mL/min)の有意な上昇,腎血流量(- 0.71 ± 1.09 mL/min)の有意な減少が認められ,心拍数(1.18 ±3.54 bpm),筋血管抵抗(- 0.33 ± 0.93 mmHg/mL/min)には有意な変化は観察されなかった.【結論】本研究の結果は,TMNによる血管支配性交感神経の調節は臓器特異性である可能性を示している.TMNが運動時の血流再分配に関与しているか否かについて今後検討したい.