理学療法の対象範囲は広く,同じ疾患・障害を持つ患者でも,文化,社会,そして患者の座標軸の違いにより,理学療法士に求められる介入計画は異なる.したがって,臨床検査や理学的検査の所見から仮説を検討するだけでなく,多様な臨床推論モデルを知り,状況に応じて柔軟に推論を行うことで,複雑な患者像を適切に捉えることが可能となる.欧米の理学療法における最新の臨床推論のパラダイムは,3つのプロセスと各プロセスを構成する2つのモデル(手続き的推論プロセス:仮説演繹モデル,パターン認知モデル,双方向的推論プロセス:意思決定共有モデル,総合的推論プロセス:患者中心統合モデル,弁証法モデル)からなっている.欧米の教育界では最近の教育ツールとして解法付き例題学習,概念地図法,自己説明などの手法が有効とされており,理学療法の臨床推論教育にも応用されている.