【目的】新型コロナウイルス流行下において、若年女性のメンタルヘルスに影響を及ぼす要因を明らかにすること。
【方法】2020年12月に、インターネットリサーチ事業者にモニター登録している16~39歳の女性を対象としてWebアンケート調査を実施し、500名の回答を収集した(回答率2.63%、有効回答率96.52%)。調査項目は人口統計学的データ(年齢、職業、同居者の有無、妊娠の有無、子どもの有無等)、経済状況の変化、メンタルヘルス不調の指標(心の状態の変化、K6(米国ケスラーらが開発した精神的健康度調査のための6項目尺度)、ベック絶望感尺度、希死念慮の有無)、新型コロナウイルス流行下においてストレスとなった事柄であった。本研究は帝京平成大学倫理審査委員会の承認を得て行われた。
【結果】心の状態について、新型コロナウイルス流行以前より「悪くなった」と回答した割合は22.8%、希死念慮があると回答した割合は29.8%であった。K6の平均値は6.00(標準偏差6.54)、ベック絶望感尺度の平均値は9.81(標準偏差5.00)であった。職業について新型コロナウイルス流行前と流行後を比較したところ、無職は5.8%であったが流行後は8.6%に増加し、主婦業は12.2%から14.8%に増加した。正規職員は31.4%から29.4%、非正規職員は20.0%から19.4%と、いずれも微減した。流行前と流行後を比較して経済状況に変化があったかについては、「良くなった」が7.0%、「変わらない」が65.8%、「悪くなった」が27.2%であった。カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定の結果、経済状況の変化は、心の状態(p<0.001)、K6(p<0.001)、ベック絶望感尺度(p=0.001)、のそれぞれと有意な関連が示された。
【考察・結論】経済状況の悪化は、複数のメンタルヘルス不調の指標となる変数と大きく関連していることが示された。具体的な経済的サポート、各種経済支援策に関する情報提供などは、若年女性のメンタルヘルス維持に重要な援助となることが示唆される。本研究はインターネット調査であり、ネット利用環境の違いや経済的背景などによる調査対象の偏り、自己選択バイアス等多くの限界がある。