【背景】
現代社会は情報にあふれ、とりわけAIやIOTは人々に益をもたらすが、一方で情報の不確
実性により人々に不安感情も引き起こす。今後ますます進展するであろう情報化社会にお
いて、不確実性と価値多様性の中で不安感情を抱えながら人々は医療における決断を行う
状況にある。
【視点・理論的枠組み】
社会構築主義・信頼
【目的】
患者と医師との関係性に注目し、医療における決断の情報源のひとつとしての医師の言葉
や態度は、患者にどのように解釈され、どのように決断に関与するのかを検討する。
【デザイン】
遡及的研究
【セッティング、対象】
調査対象者のサンプリングは、「医療に関連する『意思決定』の場面において、コンフリ
クトを経験したことのある人」という設定のもと調査会社に依頼し募集した。15名の対象
者に、意思決定に至った経緯について、過去の経験を聴き取るナラティブ・インタビュー
を行った。
【データ分析の方法】
対象者一人ひとりのナラティブを物語として再構築し、医師との関わりに関する語りを解
釈学的アプローチにより分析し概念化した。
【結果】
患者は、医師との対話を重視し、自身に対する医師の関心の度合いを測りながら、「生活
に配慮した上で、治療方法を提案してくれる」「はっきりと言ってくれる」「医師の態度
がわかりやすいから、こちらも対処できる」「医師の決断が親身に感じることで、信じら
れる」など、治療に関する医師の意図が明確に伝わる言葉・態度を、医師を信頼する手が
かりとしていた。そして、患者は、自分に関わる医師という人物を信頼することで決断へ
と向かっていた。
【結論】
患者が医師を信頼するとは、医師を「信頼したい」と望み、医師の言葉や態度から医師と
いう人物を信頼する手がかりを見つけ出そうとし、医師から与えられる医療的な情報の内
容のみならず、その情報を発する医師の言葉や態度を重視し、決断へと向かっていると考
えられた。