現在、リンダ・グラットンらが『ライフシフト』で提言した人生100年時代を迎え、さらに長期化しているコロナ禍により、働き方の多様な変化は加速されています。エン・ジャパン株式会社が運営するミドル世代の求人情報サイト『ミドルの転職』が35歳以上を対象とした「コロナ前後のキャリア観の変化」のアンケートでは、68%の人が「コロナ禍の前後でキャリア観に変化があった」と回答し、年代別では若い世代ほど「キャリア観の変化があった」と回答しています(30代:75%、40代:69%、50代:63%)。「キャリア観の変化のきっかけ」についての回答では、「リモートワーク・テレワークなど柔軟な働き方の導入・拡大」(44%)、「業界自体の先行きへの不安」(43%)、「会社の業績悪化に伴う事業の解散・縮小」(34%)が上位でした。一方で、経営側は「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への移行を標榜し、働く個人は「自律型キャリア形成」を求められています。働く個人は、このような取り巻く環境の急速な変化の中で、将来に対して先が見通せない漠然とした不安を抱えつつ、複数のストレスに晒されています。働く個人が自分らしいライフキャリアの実現のための新たな行動を起こすために、産業保健スタッフの支援の姿勢として、メンタルとキャリアの統合的なアプローチが求められています。実際、公認心理師試験の令和3年度版ブループリントの「職場における問題に対して必要な心理的支援」の項目においても、「キャリア形成支援」、「キャリア支援」、「働き方改革」等のキーワードが加わっています。今後、職場のメンタルヘルス対策におけるキャリア支援は重要な位置づけになっていくことが想定されます。今回の研究会では、産業保健の現場で活用できるキャリア理論について学び、産業保健スタッフが働く個人のライフキャリア対して、どのような支援をしていけばよいのか、皆さんと一緒に考えたいと思います。