【目的】ヒトがヒトの顔を見る際、自身の顔(自己顔)を見る場合と既に知っている知人の顔(既知顔)を見る場合、今まで見たことのない知らない顔(未知顔)をみる場合で、その認知過程に大きな違いを見せることがわかっている。本研究では顔面部への鍼刺激を行う前後の評価がこの3つのパターンでどう変化するかを明らかにすることで今後の鍼灸美容学分野への貢献を目的としている。【方法】ランダムに抽出された健康成人8名(m:4, f:4, age:20.6±0.18)を対象に、有資格者が顔面部(15穴, 25カ所)への鍼刺激を行った。また使用する鍼はセイリン社製ステンレス鍼 (l:15mm, φ:0.10mm)とし、筋層に到達する程度の深度で刺激を行った。8名へは刺激前後で魅力度に関するアンケート(橋本ら、2017より引用、一部改変)による魅力度評価を行ってもらい、同様のアンケートを既知顔群(n=99)、未知顔群 (n=101)で評価し、3群での魅力度を比較検討した。【結果】自己顔、既知顔、未知顔3群すべての評価において鍼刺激前後で優位に魅力度が増加した(p<0.05, 対応のあるt検定)。また、自己顔と既知顔の評価間において既知顔の方が魅力度を高く評価する傾向がみられた(p<0.1, 対応のあるt検定)。自己顔と未知顔の評価間および、未知顔と既知顔の評価間においては有意な差は得られなかった。【考察】鍼刺激が自己顔、既知顔、未知顔すべての魅力度評価においてよい影響を及ぼしていることが明らかになった。また、自己顔と未知顔間で確認されなかった魅力度評価の差異が自己顔と既知顔間で確認されたことから、ヒトは既知顔の変化により好意的な評価を下す可能性が示唆された。【結語】本研究により、顔面部への鍼刺激がヒトの顔認知において、いかなる場合においても魅力度を増加させることが明らかになった。また特に既知顔においては刺激前後で特に高い評価をすることが明らかになった。