【目的】皮膚の角質水分含有量が高いことは美容分野において美しい皮膚の条件の一つとされている。またヒトが印象評価をするにあたり、『若々しさ』を判断する際、目元と頬部を注視し判断していることが明らかになっている。本研究では顔面部への鍼刺激が頬部角質含有量へ与える影響を評価、検証すると共に、鍼刺激を行う環境条件において特に角質層水分含有量に影響を与えると考えられる室内湿度環境に着目し検証を行うことを目的とした。【方法】Courage+Khazaka社製、CorneometerCMを用い、洗顔直後および鍼刺激前後で右頬部同一定点における角質層水分含有量を測定し比較検討を行った。被験者はランダムに抽出された健康成人18名(m:11, f:7, age:20.7±0.11)を対象とし、鍼はセイリン社製ステンレス鍼 (l:15mm, φ:0.10mm)を使用し有資格者が刺鍼を行った。刺激部位は全ての表情筋を網羅出来るよう抽出された全15穴、25カ所とした。また、室内湿度環境を40%以上の群(n=11)と以下の群(n=7)に分け、群間比較を行った。【結果】全体の角質層水分含有量に有意な変化は得られなかった(Wilcoxon符号付順位和検定)。また高湿度群では刺激後に水分含有量が減少する傾向がみられたものの有意差は得られなかった(Wilcoxon符号付順位和検定)。低湿度群では刺激後に水分含有量が優位に増加した(p<0.05, Wilcoxon符号付順位和検定)。【考察】顔面部への鍼刺激が角質層水分含有量に与える影響は室内の湿度環境に依存する可能性が考えられる。これは鍼刺激が角質層へ与える影響が水分放出や保持を促すといったような単純なものではなく、角質層水分含有量に関連する恒常性に影響を与える可能性が示唆された。【結語】低湿度環境下で、顔面部への鍼刺激が頬部角質層水分含有量の増加させたこと、また高湿度環境下で減少傾向にあったことから、鍼刺激が角質層の水分調節において恒常性維持に関与している可能性が示唆された。