【背景】救急救命士が試行する末梢静脈路確保(Peripheral intravenous catheterization:PIVC)の対象は、心肺停止、ショック、低血糖の3病態である。PIVCの成否に影響を及ぼす因子を明らかにすることでPIVC成功率の改善に寄与する可能性が考えられる。【目的】地方消防機関の救急救命士が試行するPIVCの成否因子を検討する。【方法】2020年1月1日から2020年12月31日までの1年間において宮崎県3地域のPIVC試行率(n=774)から後方視的に検討した。【結果】PIVC試行回数(AOR=2.79, 95% CI=1.47-5.29;p<0.01),ショック症例(AOR=1.73, 95% CI=1.03-2.92;p<0.05),農村部地域(AOR=1.87, 95% CI=1.02-3.43;p<0.05)がPIVC成功率の上昇に関連し、外因性疾患(AOR=0.58, 95% CI=0.34-0.98;p<0.05),尺側皮静脈(AOR=0.40, 95% CI=0.19-0.85;p<0.05),救助隊の連携活動(AOR=0.10, 95% CI=0.02-0.60;p<0.05)がPIVC成功率の低下に関連していた。【結論】実施者の因子(AUC=0.57, 95% CI=0.51-0.62)及び環境因子(AUC=0.58, 95% CI=0.52-0.64)よりも傷病者因子(AUC=0.63, 95% CI=0.58-0.69)がPIVCの成否に最も影響を及ぼす因子である可能性が示唆された。