接骨院などの代替医療施設には、疼痛を訴えて来院する患者がいるが、これらの患者は、病院などで検査をおこなっても、明らかな器質的な疾患が見つからないことが多い。器質的な疾患がないにも関わらず疼痛を訴える患者は、心因性疼痛に分類され十分な治療を受けられずドクターショッピングを繰り返す患者もいる。またこのような患者は、代替医療施設
を受診することがある。今回われわれは、疼痛と心理学的要因等を調査しその要因を検討した。疼痛を有する人は、72名(56.7%)で疼痛継続期間は平均45か月であった。疹痛部位は、腰痛が最多で有訴率は38%であった。痛みを有することや痛みの部位数は、失感情症の「感情同定困難」と有意な正の関連を示していた。多変量解析でPBIや性別・年齢の影響を調整したとしても、「感情同定困難」との有意な関連は一貫して認められた。また多変量解析において、PBIのうち母親のケアが低いことも、痛みを有することや疼痛の部位数を説明する独立変数となっていた。今回の結果から失感情症が痛みに関連することが認められ、国内外の様々な先行研究と一致した。また幼児虐待や不適切な養育を受けると、成人になって身体愁訴を訴えやすいという研究報告がある。このことは、母親のケアが低いことが痛みと関連するという今回の結果を説明する機序として成り立つと考えた。今後は、代替医療施設に通院する患者を対象として、疼痛と失感情症の関係性について検討したい。