脳血管障害や頭部外傷を労働年齢層で発症した場合,当事者の職業復帰はQOLや経済面から考えると重要なテーマである.作業療法士(以下OT)は,就労支援に適した職種であると考えられているが,その役割について共通理解の構築には至っていない.本研究では、OTによる「職業生活への支援」を明らかにすることを目的とし,面接調査を行った。
職業生活への支援とは,食事量・睡眠時間・活動量・疲労度といった生活リズム,着替え・整容・通勤といったADLや経済的課題といった,1日の仕事以外の生活時間への支援を指す.
OTは職業生活への支援として,「日常生活状況への意識化の促し」「スケジュールおよび環境の調整」「ADL・IADL訓練」「当事者・家族と話し合いや説明および助言」を行っていた.OTは,当事者に対して生活リズム,食事量などに対して生活管理表などを用いて日常生活状況への意識化を促すこと, 時間や環境の調整を行うことで毎日の生活スケジュールを整える支援, そして直接的なADL・IADL訓練を行っていた.その際には,OTはクライエントあるいは家族より日常生活状況や考えを聴取し,事実に基づいて説明やアドバイスをすること,問題への解決策について個別あるいはグループ訓練を用いて一緒に考える取り組みを行っていたことが明らかになった。
高次脳機能障害により,発動性や認知機能の低下の影響などによって生活状況の乱れが生じることは,日常生活だけでなく,職業といった社会参加への大きな支障となる.OTは仕事を含めた生活全般への支援を就労支援の基盤としてとらえていたと考えられる.具体的には OTは1日24時間のクライエントの生活を見据えながら,自宅や施設内の活動内容を検討し,生活の安定に向けてまずは意識化を促すところから支援を行っていたと考えられる.