運動が聴覚統計学習と、その周波数スペクトル変化に対する耐性に及ぼす影響を行動実験により検証した。5音平均律の複合音が2重マルコフ連鎖(90%、10%)で遷移する500音列を作成した。健常成人24名(女性6名)の内、12名は安静着席状態(安静群)で、残り12名は自転車エルゴメータによる運動中(運動群)に音列聴取(SOA 300 ms)をしてもらった。聴取後、基本18音列と、転調、テンポ倍速(SOA 150 ms)、リズム変化(SOA 150/300 ms交互)した各18音列を10個ずつ順不同に聴取させ、聞き覚えがあるか否かの筆記テストを実施した。運動群では、リズム変化に対しての学習効果が有意に小さかった(P > 0.05)が、安静群ではそのような有意差が認められなかった。ピッチやテンポの変化に比べ、リズムの変化は運動中の聴覚統計学習の学習効果を干渉し易い事が示唆される。