【背景と目的】2016年、女性活躍推進法が施行され、働きたい女性が活躍できる労働環境の整備が企業に義務付けられた。柔道整復師が従事する施術所や医療・介護施設に、同法の適応となる101人以上の従業員を抱える事業所(2022年4月改正)は少ないが、2019年には柔道整復術公認から100年、2022年には柔道整復師国家試験が30回目の節目を迎える中で、女性柔道整復師の数も年々増加している。本研究は、近い将来女性柔道整復師としての活躍を目指す女子大学生の現状から、女性柔道整復師の離職率に関するリスク因子を抽出し、活躍しやすい環境を構築することで離職率を低下させ、女性柔道整復師の活躍推進に繋げることを目的とした。
【対象と方法】2021年4月時点で、本学の健康医療スポーツ学部とヒューマンケア学部の柔道整復学科に在籍する女子大学生のうち、調査に同意した学生を対象に、QRコード用いた「柔道整復師を目指す女子学生の現状と将来に関するアンケート調査」を実施して回答を集計、分析を行った。
【結果】本学のカリキュラムでは教員免許も取得できるが、卒業後の進路については、医療・介護系への就職希望者が大多数を占め、教育関連等の他業種への就職希望者は少なかった。また、職場の人間関係を重視するという回答が約半数を占め、大多数に結婚願望があった(早めに結婚したい、仕事に自信がついてきたら結婚したい)が、結婚後も柔道整復師を続けると回答した学生は、7割以下であった。
【考察】卒業後は柔道整復業務に携わるが、結婚後も柔道整復師を続けると回答した学生が7割以下であったことから、結婚は、柔道整復業務からの離職に繋がるリスク因子となり得る。結婚に続く、妊娠、出産というライフイベントが交絡因子として関与している可能性も考慮し、それぞれのライフイベントに対応できる職場環境を構築する必要があると考えられた。
共同著者
小野澤大輔、森川由基、森川梢、石坂千春、松浦一樹、安田秀喜
日本柔道整復接骨医学会学術大会プログラム・抄録集30回 Page60