【目的】がん化学療法時の副作用により食欲不振や栄養摂取不良がみられる。今回はTC療法とAC療法を対象とし、レジメンの違いが患者の栄養状態に影響するかを比較検討して、治療中の患者のQOL向上の一助とすることを目的とする。
【方法】】2014年8月~2021年3月の間に術前又は術後化学療法(TCまたはAC)を受けた者を対象とし、研究説明後、同意を得た者の栄養摂取状況や栄養状態を調査した。調査時期は治療開始前(P1)、2コース終了から3コース開始までの間(P2)、4コース終了直後(P3)とした。栄養摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いて、習慣的な栄養摂取量を算出した。栄養状態は血清アルブミン値により比較した。
【結果】対象となる症例はTC:n=13、AC:n=18であった。血清アルブミン値のP1、P2、P3の平均値はTCでは4.45g/dL、 4.07g/dL 、3.96g/dL、 ACは4.32g/dL、4.09g/dL、4.08g/dLであった。P1からの減少量をみると、P2では、TCは0.38g/dl、ACは0.23g/dL、P3では、TCは0.49g/dL、ACは0.24g/dLであり、TCがACの約2倍の減少量であった。エネルギー摂取量平均値を比較するとP2ではTCは235kcal、ACは約2kcalの減少、P3までにTCは265kcal、 ACは171kcalの減少が見られた。エネルギー摂取量の減少に伴って、タンパク質、脂質、炭水化物の摂取量も減少していたが、PFCバランスはほとんど変化がなかった。
【考察】TCとACの比較では、TCよりも嘔吐発現の高いACが栄養状態の低下が抑制されていることが示されたが、これはACには制吐剤を投与していることが影響していると考えられる。TC、 ACともに栄養状態は低下していたが、PCFバランスはほとんど変化がないことから栄養の偏りは少なく、食事摂取量の減少が栄養状態低下に影響していることが示唆された。今回の研究から、レジメンに含まれる副作用抑制より栄養状態に差異が現れることが示唆された。