本研究は、労働者の咀嚼力と健康、転倒災害リスクとの関連性を明らかにすることである。A事業所に勤務する労働者のうち、転倒等災害リスク評価に申し込み、参加に同意した男性29名、女性5名を対象とした。咀嚼力は「咀嚼状況関連因子」「歯関連因子」「口腔保健行動関連因子」の3つの
下位尺度からなる「咀しゃく力スケール」、健康状態は、病気の数、既往歴の数、主観的健康感を用いた。転倒災害リスク評価は、バランス能力を評価する閉眼片足テストと下肢の柔軟性を評価する2ステップテストを用いた。分析にはSpearmanの順位相関係数を用いた。結果、男性の咀嚼力と閉眼片足立ちテストとの間に相関がみられた。また、男性の咀嚼力と病気の数との間にも相関がみられた。咀嚼力とバランス能力や健康状態との間に関連性がみられ、労働者の健康や転倒災害リスクに咀嚼力が影響する可能性が示唆された。