緒言 透析患者においては、食欲低下、低栄養、および低日常生活動作(activities of daily living:ADL)は死亡の危険因子であることが報告されている。透析患者の死亡率を下げるためにも、食欲低下や低栄養を改善することが大切である。その改善のためには、血液浄化の個別化が望ましい。栄養状態の評価と血液浄化法の選択 患者に個別化した血液浄化療法を提供するためには、まず、患者の栄養状態を評価し、次に、その状態に応じた血液浄化療法を選択する必要がある。患者の栄養状態の評価には、body mass index(BMI)、体脂肪量、筋肉量、筋力などの身体的評価や、血清アルブミン、標準化蛋白異化率(normalized protein catabolic rate: nPCR)などの生化学的評価、geriatric nutritional risk index(GNRI)、主観的包括的栄養評価(Subjective Global Assessment:SGA)などの複合的評価がある。これらの評価に対して、血液浄化方法、ダイアライザおよびヘモダイアフィルタ、透析液などの種類を個別化した血液浄化療法を選択することが望ましい。栄養状態の身体的評価に関しては、lnBody(株式会社インボディ・ジャパン)を用いた栄養評価の報告がいくつかなされており、部位別筋肉量を用いて算出される骨格筋指数(Skeletal Muscle mass Index: SMI)はサルコペニアの診断基準として活用されている。生化学的評価として、nPCRが計算されることが多く、0.9~1.1g/kg/dayを基準として、この数値よりも低いと死亡リスクが上昇する。複合的評価のSGAは特別な装置を必要とせず評価ができる利点がある。しかし、最終的な栄養状態の評価は検者の主観となるため適切な評価を行うことに注意を払う必要がある。GNRIは透析患者の栄養状態や心血管イベントの評価に有用であるという報告が多くなされている。これらの評価に対して、栄養状態が良くない場合には、透析液の清浄化のみならず、アルブミンの漏出が少なく、MIA症候群の原因にもなる炎症性メディエータを吸着するポリアクリルニトリル膜の一種であるAN69膜を用いること、online-HDFと比較しアルブミン漏出量を低く抑えることができるI-HDFに変更することなどが有用である。結論 より良い血液透析治療を提供するために、患者の栄養状態の評価とその評価に応じた血浄化療法を選択することが望まれる。